第8回研究テーマ死者を葬 (ほおむ) る
【むかしの"墓"】
これまでに広島県内で発掘調査が行われた遺跡の数は約1800です。その内訳をみると,集落・貝塚532,官衙(かんが)38,城跡・居館135,古墳565,横穴墓23,墳墓360,窯(かま)・生産91,祭祀(さいし)32,寺社74,その他104です。(1つの遺跡で古墳と墳墓など,重複しているものがあります。)
古墳,横穴墓や墳墓など,むかしの"墓"を多く調査していることがわかります。調査例が多いのは,それだけむかしの"墓"が数多く残っているというあかしです。ちなみに広島県内の古墳の数は,約1万基も確認されています。
官衙…むかしの役所
古墳・横穴墓・墳墓…むかしの墓
生産…製鉄や製塩など
"墓"にもいろいろな"かたち"があります
むかしの“墓”にはどのようなものがあったのか,いくつか例をみてみましょう。
法成寺サコ遺跡(福山市駅家町) 弥生時代の墳墓群 |
A.石蓋土壙墓(いしぶたどこうぼ) | ||||
蓋石をとると |
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地面を掘って死者を埋葬し,石で蓋をしました。 | |||||
B.箱式石棺墓(はこしきせっかんぼ) | |||||
蓋石をとると |
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石でつくられた棺に死者を埋葬しました。 | |||||
C.土壙墓(どこうぼ) | |||||
地面を掘って死者を埋葬しました。 |
上安井古墳(安芸郡海田町)
古墳時代前半期の円墳
金田第2号古墳(比婆郡口和町)
古墳時代後半期の円墳
左)古墳・竪穴式石室(こふん・たてあなしきせきしつ)
右)古墳・横穴式石室(こふん・よこあなしきせきしつ)
どちらの古墳も,土を盛り上げて小山のようにしてあります。矢印部分の石室(石でつくられた部屋)の中に死者を埋葬しました。
ここでとりあげたのは,むかしの"墓"のほんの一部です。 その時代や状況によって"かたち"は様々です。例えば写真のように,子どもを埋葬するためにつくられた土器蓋墓がみられるように…
亡くなった人を葬った時の様子は?
人が亡くなった時に,どのように葬ったのでしょうか?残念ながらそれを正確に再現することはできません(研究が進めば可能かも…)。しかし多くの遺跡でその痕跡をみることはできます。
例えば,さきに紹介した金田第2号古墳をみてみましょう。
1.入口におかれた須恵器の杯身や杯蓋 | ||
2.須恵器の甕(入口左側) | ||
復元すると |
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3.須恵器の甕(入口右側) | ||
復元すると |
石室の入口には須恵器の杯身や杯蓋がきれいに並べて置かれていました。また,これらの土器とは時期が少し異なりますが,入口の両側には須恵器の甕が置かれていました。
これらの土器は死者を葬る際に,お供え物を入れたうつわや祭礼を行った時に用いたものと考えられます。およそ1400年前の墓や儀式の様子がみなさん想像できましたか?
研究室からひとこと
死者を悼(いた)む心は,むかしも今も変わりませんね。"死"について大切に考えてきたむかしの人のようすをみると,『自分は今どのように生きていくべきか』と考えさせられます。みなさんはどのように感じられましたか?