第16回研究テーマパンとごはんの食文化
【ムギ(麦)がパンに,コメ(米)がごはんになったわけ】
【ムギの穂】
ムギの殻(から)は硬(かた)く,ムギの原産地といわれる西アジアでは,磨石(すりいし)を前後に動かして殻を取り除いていましたが,そのとき実もいっしょに磨りつぶされて粉になりました。
一方,東アジアが原産地とされるコメは,棒を上下に搗(つ)くことによって,ムギより簡単に粒のまま殻を取り除くことができました。
基本的にムギは粉にして,コメは粒のままで食べるさだめは,それぞれの殻を取り除く方法によって決まったようです。
【稲の穂】
※コメはもみがらを取った
稲の果実
【赤米(あかごめ)】
という古代のコメ
【磨石(すりいし)と台石(だいいし)】
西アジアでは磨石を台石の上で
前後に動かしてムギを挽(ひ)いた。
シリア・ルメイラ遺跡
(出典:古代オリエント博物館図録)
【石皿(いしざら)と敲石(たたきいし)】
日本では敲石を石皿の上で上下に搗(つ)いて
木の実などをつぶしたり,粉にした。
西本3.4号遺跡(東広島市)
西アジアの地は乾燥地域ですから水が豊富とはいえませんが,ムギの粉は少量の水があれば,こねてのばして薄い皮(パン生地(きじ))にすることができました。
一方,コメを焚(た)くには多量の水を必要としました。そのため,日本のように水の豊富な温帯地域では甕(かめ)や鍋(なべ)などの土器が発達することになりました。
【日本のカマド 道ヶ曽根遺跡(三良坂町)】
【西アジアのパン焼きカマド】
(出典:古代オリエント博物館図録)
【日本の炊事(すいじ)道具】
助平3号遺跡(東広島市)
西アジアでは燃料となる木も豊富とはいえませんが,パン生地を焼くには,わずかな木があれば十分でした。
一方,日本にはコメを焚く燃料となる木が豊富にありました。
西アジアではパン焼きカマドを作り,パン生地は木を燃やした余熱(よねつ)で焼きました。
一方,日本ではカマドの上にコメと水を入れた甕(かめ)や鍋を置き,直火(じかび)で焚きました。
こうしてムギはバリッとしたパンに,コメはふっくらとしたごはんになったのです。
研究室からひとこと
こうしてみると,私たちの家の台所にあるオーブンはムギの調理法に,また,炊飯器はコメの調理法にルーツがあるようです。
ムギとコメといった東西の食文化の違いを,考古学から見てみるのも楽しいですね。