第14回研究テーマむかしのお風呂を探る!!
【日本のお風呂のルーツは!?】
日本人はお風呂が好きですから,熱い湯に首までどっぷりつかっている姿が容易に目に浮かんできます。では,むかしからそうした入り方だったのでしょうか?今回は日本人の入浴法の歴史をたどってみましょう。
【万徳院全景(千代田町)】
【万徳院風呂屋跡】
【万徳院風呂屋(復元)】
【万徳院風呂屋断面図】
【万徳院風呂屋形(復元)】
お風呂のルーツは蒸し風呂?
風呂は室(むろ)が訛(なま)ったもので,密閉されている空間での蒸気浴を意味するものとされています。それは仏教とともに大陸から伝わってきました。
日本人の入浴がいつ頃から行われたのかははっきりしませんが,少なくとも奈良時代の古代寺院に風呂が設けられていたことが記録によって確かめられています。ただ,寺院の入浴が蒸気浴によるものか,現在のような湯浴によるものかは必ずしもよくわかってはいません。
しかし,当時の寺院建築の浴室をみると,釜に沸かした湯の蒸気を,管で小部屋に送り込む蒸気浴の構造であることから,おそらく古代から中世にかけては蒸し風呂形式の入浴法の方が,湯浴形式のものよりも広く普及していたと思われます。
近年,山県郡千代田町で全国で2番目(県内初)の中世の風呂屋跡が発見されました。天正2 (1574)年頃に建てられた万徳院という寺院跡を発掘調査したとき確認されたもので,現在,現地に蒸し風呂形式の風呂屋が復元されています。
伝統的入浴法
風呂の入浴形式はその後,江戸時代の初期,浴室に高さ30cmくらいまで湯をためた浴槽を設け,そこで足だけ湯につかり,上半身は今までと同じように湯気で温まる,半湯半蒸気式の風呂がうまれます。そして,江戸時代の末期になって,ようやく現在のような首までつかる湯浴が普及することとなりました。
こうしてみると,蒸気浴の歴史は古く,今日でこそ身体を癒すのにサウナ風呂が利用されていますが,蒸し風呂こそ,日本人にとって長く続いた伝統的な入浴法だったと考えられます。
研究室からひとこと
蒸気浴の一つに石風呂(いしぶろ)があります。直接木を燃やして部屋を熱し,灰を取り除いたあと,海藻や海水に漬けたムシロを敷いて,その蒸気熱で身体を温める入浴方法です。
この古くからの蒸し風呂の伝統をもつ石風呂が,県内の広島市と竹原市に存続しています。風呂の歴史を知るうえでも,一度,体験してみてはいかがですか。
万徳院跡の資料については,千代田町教育委員会の提供と協力をいただきました。