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むかしライフ研究室

第12回研究テーマ生活用具が生み出された秘密

【生活用具さまざま】

    かつて,日本人は縄文時代から古墳時代にかけての長い間,竪穴住居(地面を掘り下げて床面をつくり,屋根で覆ったもの)を建てて暮らしていました。しかし,やがて9世紀(平安時代)になると,竪穴住居はほとんど姿を消し,すまいの形態は平地式住居へと変わっていきました。

    そして,それに伴いさまざまな生活用具が生み出されてきました。


  • 平地式住居の内部(イラスト)
  • 竪穴住居と平地式住居の大きな違いは,土間と,土座部(地面に藁や籾殻を敷詰め,その上にムシロなどを敷いたところ)あるいは床部とがはっきりと分かれたことです。

    なかでも,貴族階級は高床式住居を建てて暮らすようになりますが,一般民衆もやがて土座や板敷きの床で寝起きしたり,食事をしたりするようになりました。

    こうした床上での生活がはじまると,人々の暮らしにも変化がみられるようになります。

    たとえば…

    【炭櫃】
    暖をとるのに,いままでのような固定式の炉から炭櫃(陶製の火鉢)やひで鉢(石製の火鉢)といった移動式のものが考案されました。

    【灯明皿】
    明かりをとるために,灯明台と灯明皿が使われるようになりました。

    【食膳具】折敷や各種うつわなどの食膳具が豊富になってきました。これは,食器や料理を寝起きするところに直接置くのを避けるといったことが要因のひとつに考えられます。


    【炭櫃/鷺田遺跡(東広島市)】

  • 【灯明皿/郡山城下町遺跡(吉田町)】

  • 【食膳具/備後国府跡(府中市)】

    また,日常生活に必要なものを整理するための棚や,使わないものをしまっておくための厨子や櫃なども備えられるようになりました。

研究室からひとこと

    現在,私たちのすまいのなかを見まわしてみると,暖房器具,照明器具,食器戸棚,整理箪笥など数多くの生活用具であふれています。しかし,それらの一つひとつにも歴史の変遷があるのです。そうしたことを考古学の観点から考えてみるのも楽しいものです。

    ところで,ランプ,陶製火鉢,水甕,櫃などが,今では生活用具というよりもアンティックなインテリアとして愛用されています。これは,現代人のいにしえへの郷愁によるものなのでしょうか。

    かつて家庭で使われていたランプ・陶製火鉢・長櫃

    民具については,広島県立歴史民俗資料館所蔵資料の提供と協力をいただきました。

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