ひろしまの遺跡 第84号 |
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迫田山遺跡 |
迫田山遺跡では,古墳時代初頭から古代にかけての竪穴住居跡,掘立柱建物跡,土坑,溝状遺構などが確認されました。山陰型甑形土器はその竪穴住居跡の1軒(ベッド状遺構をもつ大型竪穴住居跡で,桁材・垂木材など構築部位を推測できる炭化材を検出した焼失家屋です。)の床面から,広口部を下にした状態で見つかっています。広口部径40.5cm,狭口部径13.8cm,器高72.6cmです。これで,未報告のものを合わせると,広島県内の山陰型甑形土器の出土は27遺跡43例目になりましたが,本遺跡のようにほぼ完全な形に復元できたものは,非常にめずらしいと言えるでしょう。 山陰型甑形土器の分布は,西は福岡県から東は石川県,南は愛媛県まで広がっていますが,その中心は鳥取・島根両県にみられます。狭口部を上位と捉えるか,下位と捉えるか,また用途についても,名称どおり「甑」としての用途を考える説,「仮器」と考える説,「煙突」状の使用を考える説などがあり,研究が進められています。 |
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上安井古墳(安芸郡海田町東海田)から出土 |
上安井古墳は,古墳時代前期前半に築造されたと考えられる13.5m×15mの円墳です。墳丘頂部の竪穴式石室には,底部が「U」字状の木棺が据え置かれていたと考えられます。石室内からは,土師器(壺・甕),鉄器(鉄鏃・鉄剣・鉄斧・![]() 副葬品のなかで注目されるのが,土師器の壺と甕です。広島県内では竪穴式石室内に土器を副葬した前例はなく,竪穴式石室に限らず前期古墳に土器を副葬する例は全国的に見てもごくわずかです。被葬者の頭部側の棺外から据え置かれた状態で出土した壺と甕は,いずれも器壁が薄く丁寧なつくりで,特に壺(直口壺)は化粧土を施した精製土器です。一般的に壺や甕などの貯蔵具は足元側に副葬され,1個体であることが多く,今回のような出土例はめずらしいものと言えるでしょう。 |
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