ひろしまの遺跡 第85号

遺物ピックアップ 昨年度発掘調査の遺跡から

石とガラスを組み合わせた古墳時代のネックレス
石とガラスを組み合わせた古墳時代のネックレス
 上の写真は,昨年度発掘調査を行った上安井古墳(安芸郡海田町東海田)の埋葬施設Bから出土した玉類です。上安井古墳は3世紀後半から4世紀前半に造られた古墳です。埋葬施設Bは,この古い古墳の在るところに,6世紀前半,新しく造られたことがわかっています。
 埋葬施設Bからは人の下顎の骨も見つかりました。このことから,このお墓には20歳前後の人(性別不明)が埋葬されていたことがわかりました。
 そして,この人の首付近に上の写真の玉類があったのです。出土の状況から推察して,この人は,写真のようなネックレスをつけて埋葬されたと考えられます。
 緑色や白緑色の管玉は,石でできています。小玉は全てガラス製で,赤褐色,半透明の紺色,青色,透明の暗青色などをしています。この玉類を見た見学者は,あまりにもきれいなので,「持って帰って,自分のためのアクセサリーを作りたい」と言っておられました。
 ネックレスは縄文時代からあり,素材には石や貝,骨などを使っていました。ガラスが使われ始めたのは,弥生時代前期に大陸からもたらされてからのことです。そして,弥生時代の中期には大陸から渡ってきたガラスを再加工して,小玉などが作られるようになり,さらに6世紀前半になるとガラスそのものを作り始めたと考えられています。
 昔の人々のアクセサリーはガラスの出現により,さらに彩り豊かなものになったのではないでしょうか。いつの時代もきれいなもの,美しいものを求める人の心は変わらないようです。(渡邊昭人)
上安井古墳
古墳は点線に囲まれた部分

管玉が並んで出土したようす
管玉が並んで出土したようす
玉類を検出しているところ
玉類を検出しているところ
小玉のなかには径が3mmにも満たないものがあるため,それを見つけるのは大変な作業です。


      つぎへ